【学校法人会計の実務】収益事業の解説
学校法人でも収益を目的にした事業を行うことはでき、実際にそういった収益事業を行なっている学校法人は珍しくありません。
今回は学校法人会計とはまた異なる収益事業に関する会計処理について解説です。
◆収益事業の概要
私立学校法では、『学校法人は、その設置する私立学校の教育に支障のない限り、その収益を私立学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができる』と定めています。
収益事業の種類として、文部科学大臣の所轄に属する学校法人においては18業種が定められており、都道府県知事所轄の学校法人は各都道府県が広告しています。
※法人税法上は、学校法人は公益法人等に該当し、収益事業を行う場合にはその事業の所得につき課税されますが、その範囲については34業種が定められており、上述した範囲と必ずしも一致していません。
収益事業を行うときは、寄附行為にその事業の種類その他その事業に関する規定を設け、当該寄附行為についてその所轄庁の認可を申請する必要があります。
また、計算書類については、学校法人の計算書類の後に収益事業に係る貸借対照表及び損益計算書を袋綴じして所轄庁への提出します。
◆収益事業の会計基準
収益事業に関する会計は、学校法人の一般会計から区分し特別の会計として経理しなければならず、その会計処理及び計算書類の作成は学校法人会計基準ではなく一般に構成妥当と認められる企業会計の原則に従って行わなければなりません。
◆収益事業の課税関係
法人税法上では、学校法人等の公益法人等が収益事業を行なっている場合、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになっています。
この収益事業の意義については、法人税法において『販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう』とされています。
法人税の税額は課税所得に税率を乗じて算出されますが、その他に地方法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人特別税が課されます。なお、消費税及び地方消費税については収益事業を行なっているか否かにかかわらず、学校法人の取引について課税されます。
※法人住民税に関しては、収益事業から得た所得の金額の9割以上を学校の経営に充てている場合は収益事業の範囲から除かれ、この場合法人税割のみでなく均等割についても非課税となります。
◆収益事業の区分経理の方法
収益事業については、その会計は学校法人の一般会計から区分し、特別の会計として経理しなければなりません。また法人税法上も、収益事業の経理とそれ以外の経理とを区分することとなっているため、これに従えば私立学校法上の区分の要件を満たしていると考えられます。
※収益事業の区分経理は費用及び収益に関する経理だけでなく、資産及び負債に関する経理を含むため、収益事業に属する資産及び負債を抽出する必要があります。
◆収益事業会計から学校法人会計への寄付金の処理
収益事業で得た利益から適当な額を寄付金として学校法人会計に繰り入れるのが一般的です。これが学校法人会計における『収益事業収入』に該当し、この寄付金については法人税法上みなし寄付金となることが定められています。
学校法人の場合には、みなし寄付金を含めた寄付金を控除する前の当該事業年度の一定の所得の50%(その金額が200万円未満の場合は200万円)を損金に算入できます。
◆補助活動事業と収益事業の相違点
学校法人会計基準において、補助活動収入と収益事業収入は以下のように定義されています。
・補助活動収入=食堂、売店、寄宿舎等教育活動に付随する活動に係る事業の収入をいう。
・収益事業収入=収益事業会計からの繰入収入をいう。
ある事業について、収益事業とするか補助活動事業とするかについては、その事業が収益を目的としているものであれば収益事業とし、収益を目的とせず学校教育の一環として行なっていれば、教育活動に付随するものとして補助活動事業とすることになります。
※収益事業を行う場合には、寄附行為にその旨を記載して所轄庁の認可を申請する必要があります。