【学校法人会計の実務】資金収支計算書の概要

今回は資金収支計算書の概要について解説です。
一般事業会社のキャッシュ・フロー計算書に相当するもので内容も酷似しています。
経過勘定に関する調整として資金収入(支出)調整勘定という学校法人特有の科目が使用されますが、それ以外は特に難しい点はありません。

◆資金収支計算の目的
①毎会計年度、当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容を明らかにする。
②当該会計年度における支払資金の収入及び支出のてん末を明らかにする。
支払資金とは『現金及びいつでも引き出すことができる預貯金』のことを言います。

◆資金収支計算書の内容
学校法人は、当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容並びに支払資金の収入及び支出のてん末を明らかにするために資金収支計算書を作成します。
資金収支計算書は前期末現金預金(前年度繰越支払資金)からスタートし、これに当該会計年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出を総額で表示し、当期末現金預金(翌年度繰越支払資金)となる過程を表現しています。
資金収支計算書は、収入の部及び支出の部を設け、収入又は支出の科目ごとに当該会計年度の決算の額が予算の額と対比して記載され、様式に従い作成されます。
資金収支計算書に記載する科目については別表第一に定められており、大科目及び小科目に区分し、備考欄にその科目の内容が記載されています。小科目は各学校の実情に応じて追加ないし細分することが認められ、大科目と小科目の間に中科目を設けることも可能ですが、大科目についてはそのような定めはなく追加や変更は認められません。

◆資金収支計算書の資金調整勘定とは
資金収入調整勘定=前期末前受金・期末未収入金
資金支出調整勘定=前期末前払金・期末未払金

◆過年度損益修正の資金収支計算書上の表示
『学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)』により、資金収入又は資金支出を伴う前期損益修正損益は『過年度修正額』として、資金収支計算書において、資金収入は大科目『雑収入』・小科目『過年度修正収入』、資金支出は大科目『管理経費支出』・小科目『過年度修正支出』として処理することが定められています。

◆人件費支出に関する会計処理
人件費支出はその金額面において経常的支出のうち主要部分を占め、また質的側面からは教育活動を行うたまえの教職員等に関する支出であり、重要な支出といえるため、計算書類においてもより詳細な表示を行うため人件費支出内訳表の作成が必要となります。

①人件費支出の区分
職員人件費の定義=教員として所定の要件を備えた者について、学校が教育職員として任用している者に係る人件費。
※教員と職員とを兼務している場合は、それぞれの担当時間、職務内容、責任等によって主たる職務と考えられる方に分類することになります。

②役員報酬の定義=理事及び監事に支払う報酬額をいいます。理事が職員(事務局長)を兼務している場合には、その職位からして妥当とされる額を職員人件費とし、これを超える額については役員報酬として取り扱うことが妥当と考えられます。
※評議員は役員ではないため、評議員に支給した報酬の処理については管理経費の適当な小科目で処理することが妥当です。

③本務・兼務の区分
本務・兼務の区分は、学校法人の正規の職員として任用されているか否かによります。
私立大学等では専任教職員が原則として本務者となり、知事所轄学校法人では基本的には学校法人との身分関係が正規である者を本務者とすることが妥当と考えられます。

④受入出向者に対する人件費支出の会計処理
派遣者が職員等として発令されている場合は出向料は職員人件費に該当し、派遣者が学校と企業との委託契約による場合は教育研究経費の『報酬・委託手数料』等で処理します。

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