【学校法人会計の実務】貸借対照表の概要

固定性配列法を採用している点以外は一般事業会社と同様です。

◆貸借対照表とは
貸借対照表は、年度末における学校法人の財政状態を明らかにする計算書類であり、資産、負債、純資産に属する項目を金額で表示したもの。
資産=教育研究活動に使用される学校法人の財産、負債=その財産の調達先のうち将来返済しなければならない債務、純資産=法人外部へ返済の必要のない学校法人に帰属する資金総額であり正味財産と呼ばれている。

貸借対照表とは別に、学校法人の資産、負債の内訳を表示する書類として財産目録がある。
財産目録は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に作成するもの及び学校法人の設立申請時等の寄附行為の認可又は変更認可申請書類の添付書類として作成するものがある。

◆貸借対照表の目的
・学校法人の財政状態が健全であるかどうかの情報を提供する
・教育研究のための必要な資産の保有状況を表示する

◆固定性配列法の採用
学校法人では、教育研究活動に必要な施設設備等の維持、充実に努める必要があり、主要な財産は校地、校舎、器具備品等といった固定資産から構成されており、学校法人にとっては固定資産が重要であり、装置産業型の企業に類似していることから固定性配列法が採用されている。

◆貸借対照表の様式
学校法人会計基準第七号様式に示されている。
※第七号様式に示されている大科目及び中科目は金額がなくても省略できない。

◆固定資産明細表とは
貸借対照表のうち固定資産については固定資産明細表の作成が求められている。
固定資産明細表とは固定資産の各科目別にその増減の状況や事由等を記載したものであり、貸借対照表に附属する明細表として毎年度作成する計算書類の1つ。

◆固定資産明細表の記載上の留意点
固定資産明細表は学校法人会計基準の第八号様式に示されており、その記載においては以下のような細かい留意が挙げられる。

・各科目の期首残高、当期増減額及び期末残高は取得価額で記入し、固定資産明細表の差引期末残高と貸借対照表の金額は一致する。
・減価償却額の累計額合計は貸借対照表の脚注と一致する。
・売買による増減以外の特殊な事由による増減があった場合には、その事由を摘要欄に記載する(例:贈与や災害による廃棄等)。また、売買による増減の場合でも、同一科目についての増加額又は減少額が貸借対照表の資産総額の100分の1又は3,000万円のいずれかを超える場合にはその事由を記載する。

◆借入金明細表とは
借入金明細表は貸借対照表に附属する明細表として毎年度作成する計算書類の1つであり、借入金の使途・利率・返済期限等を記載したもの。
※学校債の記載は不要。

◆借入金明細表の記載上の留意点
借入金明細表は学校法人会計基準の第九号様式に示されており、その記載においては以下のような細かい留意が挙げられる。

・長期借入金及び短期借入金について、『公的金融機関』、『市中金融機関』及び『その他』に区分して記載する。
・公的金融機関には日本私立学校振興・共済事業団、私立学校振興会、住宅金融公庫等が挙げられ、市中金融機関には銀行、信託会社、保険会社等が挙げられ、その他には個人からの借入金等が記載される。
・長期借入金のうち分割返済期限が貸借対照表日後1年以内に到来するものは、長期借入金の当期減少額欄及び短期借入金の『返済期限が1年以内の長期借入金』の当期増加額欄の金額の頭に※印をつけて関連を明らかにする。
・摘要には借入金の使徒及び担保物件の種類を記載する。この担保物件の種類は、貸借対照表の脚注『担保に供されている資産の種類及び額』の種類と一致する。

◆固定資産の評価
固定資産のうち、現に使用することをやめ、かつ、将来も転用するなどにより、使用する予定のないものについては、理事会及び評議員会の承認を得た上で、備忘価額を残して貸借対照表の資産の計上額から除くことができる。

固定資産について貸借対照表の資産の計上額から除くことができるのは以下の条件にすべて該当する場合である。
・固定資産の使用が困難な場合
・処分ができない場合
・上記いずれにも該当する固定資産であり、備忘価額を残して貸借対照表の資産計上額から除くことについて理事会及び評議員会の承認を得た場合。

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