【学校法人会計の実務】基本金の概要

◆基本金とは
学校法人は、その本来の目的である教育研究活動を円滑に遂行していくために必要な資産を継続的に保持しかなければならず、そのために必要な金額を事業活動収入の中から留保したものが基本金である。

教育研究活動=教育、研究、教育研究管理等のすべての諸活動が含まれる。
継続的に保持=教育水準の低下とならないようにすること、そして、教育水準の低下を一時的にもたらすことになった場合でも、従来の水準にすみやかに引き上げることが意図されている。
事業活動収入の中から留保=基本金組入れの対象とすべき資産を定め、これらの資産に相当する額を基本金として維持することを表す。

◆基本金と資本金との違い
①資本金及び基本金の増加
資本金は株式の発行による資金調達により増加し、基本金は教育用の固定資産等の増加及び恒常的に保持すべき資金の増加等に伴い増加するため、増加要因が異なる。

②資本金及び基本金の減少
資本金は減資や欠損填補により減少し、基本金は学校法人会計基準第31号の各号のいずれかに該当しこれに対応する資産等を継続的に保持しない場合には取崩=減少する。
第31号の各号とは以下の通りである。
・その諸活動の一部又は全部を廃止した場合、その廃止した諸活動に係る基本金への組入額
・その経営の合理化により第1号基本金対象固定資産を有する必要が亡くなった場合、その固定資産の価額
・第2号基本金対象資産を将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなった場合、その金銭その他の資産の額
・その他やむを得ない事由がある場合、その事由に係る基本金への組入額

◆基本金組入れと減価償却との関係
減価償却を実施している固定資産に対しても基本金の組入れを行うことが学校法人会計基準の仕組みになっているため、取得した固定資産相当額を基本金組入額として事業活動収入から控除し、さらに当該固定資産に係る減価償却額を事業活動支出の一部として事業活動収入から控除するという二重構造になっていると考えられる。

しかし、減価償却の機能が固定資産の再取得資金を積み立てることにあるのに対し、基本金の組入れは固定資産の新規取得時においてその取得源泉が自己資金により確実に確保され財政的基盤が安定していることを示していると言えるため、両者は異なる機能、目的のために行われているのであり二重負担となっているわけではない。

◆基本金組入れの対象となる資産及び金額
①学校法人が設立当初に取得した固定資産で教育の用に供されるものの価額又は新たな学校の設置もしくは既設の学校の規模の拡大若しくは充実向上のために取得した固定資産の価額(第1号基本金)
②学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大若しくは教育の充実向上のために将来取得する固定資産の取得に充てる金銭その他の資産の額(第2号基本金)
③基金として継続的に保持し、かつ、運用する金銭その他の資産の額(第3号基本金)
④恒常的に保持すべき資金の額(第4号基本金)

◆固定資産の取替更新に伴う基本金組入れの扱い
固定資産を取替更新した場合は、原則として個々の固定資産ごとに基本金要組入額を改訂するべきかどうかについて判断するが、機器備品のように単価が低く、かつ多量に取替更新するものについては新旧資産を個別に対応させることが実務上困難であるため例外処理が認められている。

①個別対応(原則処理)=基本金はそのままとし、取替時のマイナス差額は将来の同一種類の機器備品の取得時のために繰延べられる。ただし、次年度以降に同一種類の資産を取得する予定がない場合には取崩対象額となる。
②例外処理=取替更新時のプラス差額は当年度の基本金用組入額となり、マイナス差額は次年度以降に同一種類の資産を取得する予定があれば繰延べ、無ければ取崩対象額となる。

◆基本金の未組入れとは
基本金の未組入れとは、第1号基本金について、固定資産の取得年度において基本金組入れを行わず、翌会計年度以降の会計年度へ基本金組入れを延期することを言う。
具体的には、固定資産を借入金又は未払金により取得した場合において、当該借入金又は未払金に相当する金額については、返済又は支払を行った会計年度において、返済又は支払を行った金額に相当する金額を基本金へ組み入れるものとする。

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