【学校法人会計の実務】個別会計処理の解説①

前回までの記事で学校法人会計に関する基本的な内容の解説は終わりましたので、今回からは頻度は少ないものの発生可能性の高い非定型的な個別会計処理の解説です。

◆大きな災害において生じた収入・支出等の会計処理
①義援金受入れの処理
現金による受入れは寄付金収入(特別寄付金)、現物での受入れは現物寄付として処理します。
金額が多額となる場合には注記又は小科目で別掲することが適切です。

②資産処分差額の処理
校舎等の損壊による資産処分差額は災害が発生した日の属する年度に『災害損失』として特別収支に計上します。
撤去費用又は修繕費についてはこれを実施した日の属する年度に計上しますが、場合によっては合理的な見積額を引当計上することも考えられます。

③被災により失った現金等の処理
管理経費の雑費等として処理します。

④損害保険金の交付に係る会計処理
保険金収入は確定した時に会計処理しますが、保険金の確定までに時間を要することが多いことから、被害に対応する付保状況について注記により適切に説明することが適切です。

⑤生徒・教職員等への見舞金の処理
生徒やその家族への見舞金は教育研究費の福利費、教職員等への見舞金は管理経費の福利費等により処理します。

⑥授業料等の減免の処理
被災した学生生徒等及び入学予定者に対する授業料等の減免の処理については、教育研究経費の奨学費等に計上します。

⑦計算書類の注記
被災の状況に応じ以下の事項を注記することが望まれます。
・その旨
・被害の状況
・被害の状況等に合理的な見積もりに関し説明を要する場合、その旨及びその理由
・当該被害が教育研究活動又は収益事業に及ぼす影響

知事所轄学校法人における会計処理上の特例
大学等を設置する学校法人は文部科学省の所轄となっており,高校以下の私立学校を設置する学校法人及び私立専修学校又は各種学校を設置する法人は都道府県知事の所轄となっています(私立学校法第4条)。「基準」は文部科学省が所轄する学校法人及び知事所轄学校法人に共通して適用されますが,知事所轄学校法人は中規模あるいは小規模な法人が多いため,会計処理及び計算書類の記載方法等の簡略的な方法が認められています。

まず「基準」においては以下の特例が定められています。
① 活動区分資金収支計算書又は基本金明細表を作成しないことができる(ただし高等学校を設置する法人においては,活動区分資金収支計算書に限る。)(「基準」第37条)。
② 知事所轄学校法人のうち高校を設置する学校法人を除いて,徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れないことができる(「基準」第38条)。
③ 「恒常的に保持すべき資金」として基本金に組み入れるべき金額の全部又は一部を組み入れないことができる(「基準」第39条)。
④ 「基準」別表第一及び第二ではすべての知事所轄学校法人について資金収支計算書及び事業活動収支計算書において教育研究経費(支出)の科目及び管理経費(支出)の科目に代えて経費(支出)の科目を設けることを認める。
⑤ 「基準」別表第一及び第三ではすべての知事所轄学校法人について資金収支計算書及び貸借対照表において教育研究用機器備品(支出)及び管理用機器備品(支出)の科目に代えて機器備品(支出)の科目を設けることができる。

次に「都道府県知事を所轄庁とする学校法人における学校法人会計基準の運用について(通知)」では別途以下の特例が定められています。
知事所轄学校法人のうち単数の学校(各種学校を含み,2以上の課程を置く高等学校を除く。)のみを設置する場合は,資金収支内訳表,人件費支出内訳表及び消費収支内訳表(基準改正後は事業活動収支内訳表)の部門ごとの区分記載を省略することができる。

最後に「小規模法人(=知事所轄学校法人)における会計処理等の簡略化について(報告)」について(通知)」では以下が定められています。
① 事業活動収支計算の期末一括処理
期中は現金・預金の入出金を伴う取引のみを記帳し,非資金取引(未収入金,未払金の発生,現物寄付,減価償却額,退職給与引当金の計上など)は会計年度末に一括して処理することができる。
② 発生主義の不適用
一定の契約に基づいて継続的に受ける用役に対する支出(光熱水費,電話料金等)及び一定の規約に基づいて継続的に受ける収入(受取利息等)については現金主義(出金時,入金時に事業活動収支計算に含める。)で処理することができる。
③ 貯蔵品の購入時における事業活動支出の処理
販売用の文房具及び制服等の購入支出については,購入年度の事業活動支出とすることができる。しかし,これらが会計年度末に多額に残っている場合は流動資産として貸借対照表に計上する必要があります。
④ 形態分類によらない小科目の設定
幼稚園のみを設置する学校法人では、日常の教育活動の一貫としての諸行事(運動会、学芸会等)に係る経費、教職員の資質向上のための研修会、講習会等への参加に係る経費については形態別分類によらず機能別分類により小科目を設定することができる。

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