【学校法人会計の実務】個別会計処理の解説②

前回に引き続き頻度は少ないものの発生可能性の高い非定型的な個別会計処理の解説です。

◆学生生徒等納付金の会計処理
学生生徒等納付金収入とは、通常在籍を条件として又は入学の条件として、所定の均等額を納入する旨が学則、校則又は学生生徒等の募集要項等に記載されているものをいいます。具体的には、授業料収入(聴講料、補講料含む)、入学金収入、教材料収入、暖房費収入、実験実習料収入、施設設備資金収入等が該当します。

文部省は、『私立大学の入学手続時における学生納付金の取扱いについて』において、入学式前に入学辞退者から入学金以外の納付金はできるだけ徴収しないのが望ましい旨指導しています。
また、入学辞退者に係る入学金については、『財務計算に関する書類及び収支予算書の届出について』において、徴収した年度に前受金収入として計上し、翌年度に『入学金収入』として取り扱うのが適当であるとされています。

◆授業料減免に関する会計処理
授業料減免に関する会計処理は、減免額控除後の金額を学生生徒等納付金収入に計上する方法(純額法)と、減免額控除前の金額を学生生徒等納付金収入に計上し減免額を教育研究費支出に計上する方法(総額法)の2つの考え方がありますが、学校法人委員会研究報告では総額法を採用しています。

また、教職員の子弟に関する減免については、給与への追加としての性格を有すると考えられ、総額を学生生徒等納付金収入として計上し、減免費を人件費として計上することが妥当とされています。

◆高等学校等就学支援金の会計処理
約10年ほど前から私立高等学校等に在籍する生徒の授業料に充てるものとして就学支援金の支給が開始されました。当制度では、私立学校等の各学校設置者は、就学支援金を都道府県から受給権者である生徒に代わって代理受領し、受給権者である生徒の授業料債権への弁済に充てることになります。

具体的な会計処理は、生徒からの授業料収入が就学支援金相当額を差し引いた額を収納するか、いったん授業料全額を収納し事後的に就学支援金相当額を返還するか、で途中の会計処理は異なるものの、最終的に計上される授業料収入は同額となります。

◆寄付金収入の会計処理
寄付金収入とは、金銭その他の資産を寄贈者から贈与されたもので、補助金収入とならないものをいいます。そして、寄付金収入は、寄贈者が寄付金の用途を指定しているか否かで特別寄付金収入と一般寄付金収入に分けられます。
寄付金収入の計上年度は、寄付を受ける金銭等の受領日の属する年度です。これは、寄付金収入は寄付者の義務によるものではなく、学校法人がこれを債権として認識する必要性がないため、寄付金収入を未収入金として計上するのは妥当ではないと考えられるからです。

補助金収入は、国又は地方公共団体からの助成金と国又は地方公共団体からの間接的な助成金が該当し、これらの団体以外からの金銭等の贈与の受入れはすべて寄付金収入として処理されます。

◆補助金の会計処理
補助金収入とは、国又は地方公共団体からの助成金をいい、日本私立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体からの助成金を含みます。会計処理は国庫補助金収入や地方公共団体補助金収入等で計上しますが、地方公共団体等が科目等を特に指示している場合はそれによることになります。
都道府県私学振興会や都道府県私学協会等からの助成金が該当します。

学費負担軽減補助金
地方公共団体が、学校法人に対し学費負担軽減の目的で授業料の一部負担等の助成を行なった場合、当該助成金は補助金収入として計上され、助成金相当額は授業料収入から減額されます。授業料収入等の減額表示については、授業料収入から直接減額する方法と『補助金による軽減額』等の控除科目を用いて間接的に減額する方法のいずれも認められます。

補助金の返還
補助金は原則として補助金額が確定した後に交付することになっていますが、予算によって計算された概算額で請求を受け、交付する場合があります。そして補助事業実績報告書に基づく補助金の確定額が概算額を下回る場合には基本的に補助金を返還する必要があります。この場合の補助金の一部返還に関する会計処理は、過年度において一旦確定し収受したものであり、その一部に返還があったとしても返還命令決定通知に従ったもので過年度の修正には該当せず、管理経費支出の私立大学等経常費補助金返還金支出として処理することが妥当です。

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