【学校法人会計の実務】個別会計処理の解説④

前3回に引き続き頻度は少ないものの発生可能性の高い非定型的な個別会計処理の解説です。

◆補助金収入を教育活動と施設整備等活動とに区分する方法
経常費等補助金収入とは、『補助金収入のうち、施設設備補助金収入を除いたものをいう』とされ、『施設設備補助金収入とは施設設備の拡充のための補助金収入』と定義されています。
したがって、事業活動収支計算書において、補助金交付の根拠法令や交付要綱等の趣旨から施設設備のためという目的が明確な補助金収入のみ『施設設備補助金(特別収支)』とし、それ以外の補助金収入は『経常費等補助金』とします。

◆過年度修正額の内容
事業活動収支計算書の特別収支に計上される過年度修正額とは、前年度以前に計上した収入又は支出の修正額です。
補助金返還額については、過年度において一旦確定し収受されているので、その一部に返還があったとしてもそれは返還命令決定通知に従ったものであり、過年度の修正に該当しないことから、補助金返還額は教育活動収支の管理経費に計上されます。

◆現物寄付の会計処理
現物寄付において『贈与された資産の評価は、取得又は贈与の時における当該資産の取得のために通常要する価額をもってするものとする』と定められており、受贈資産の評価は調達価額(時価)で行う必要があります。
ここで調達価額を客観的に評価することが難しい土地や美術品などの場合には、それぞれ不動産鑑定士の評価証明書の入手、専門家への鑑定依頼又は最近の売買事例を参考に学校法人自らが評価を行うといった対応を行います。
寄付を受けた現物が消耗品費となるような場合には、会計処理を行わなくとも特に問題はありませんが、実態に即して消耗品費と現物寄付とを両建計上するのが望ましいと言えます。

◆少額重要資産の会計処理
備品管理の簡便性を考慮して一定金額以下のものは、その使用期間の長短にかかわらず固定資産とせず、一般に消耗品費、備品費などの経費として取り扱います。
しかし、少額重要資産については経費処理せずにすべて教育研究用機器備品として計上しなければなりません。
少額重要資産とは『学校法人の性質上基本的に重要なもので、その目的遂行上常時相当多額に保有していることが必要とされる資産』をいいます。
そして、機器備品の減価償却についてはグループ償却によることができ、多くの学校法人で採用しています。
グループ償却とは、取得年度ごとに同一耐用年数のものをグループ化し、一括して毎会計年度償却する方法です。

◆貯蔵品の会計処理
購入時に消耗品費として経費処理したもののうち、年度末において未使用の物品があれば貯蔵品として資産計上しますしかし、貯蔵品の合計額が僅少な場合には資産計上しないことも認められます。
貯蔵品の種類は無数にあるため、その範囲、棚卸方法及び評価方法についてはあらかじめ経理規定で定ておく必要があります。評価方法は最終仕入原価法が最も簡便かつ一般的かと思われます。

◆引当特定資産の会計処理
引当特定資産は、将来の特定の支出に備えるために資金を留保した場合に設ける勘定科目で、貸借対照表の中科目として独立表示します。
特定資産には、第2号基本金に対応するもの、第3号基本金に対応するものの他に、減価償却引当特定資産、施設設備拡充引当特定資産、退職給与引当特定資産等、将来の支出目的を記載したものがあります。
第2号基本金又は第3号基本金については、固定資産の取得又は基本金の設定に係る基本金組入計画に従い引当特定資産を設定する必要がありますが、その他の引当特定資産の設定については特に強制されておらず各学校法人の自由です。

引当特定資産の運用について、引当特定資産は特定の目的のために資金を留保したものですから、その使用目的のために元本が確実に回収されるような運用を検討すべきで、貸付信託、金銭信託、定期預金、公社債投資信託、国債等の元本の安全性とより高い利息収入を意図して運用していくことが重要です。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です