【学校法人会計の実務】個別会計処理の解説⑤

前回までの4回に引き続き頻度は少ないものの発生可能性の高い非定型的な個別会計処理の解説です。
今回で最終回です。

◆退職給付引当金の会計処理
教職員が退職した場合に支払われる退職金は、就業規則等によって給付額の計算及び給付の条件等が定められており、勤続年数に従って支払給付額が増加します。ただ、退職という事実が生じてはじめて金額や支払時期が確定するので、教職員の在職中は学校法人が退職金の支給義務を条件付き及び期限付きで追っていることになります。
そこで毎会計年度の会計事実を明瞭に表示するために、毎会計年度の負担に属すべき退職金の額はその支出の事実によらず、支出の原因又は効果の期間帰属に基づいて毎会計年度の事業活動支出として認識し、この負担額を累積額を引当金として計上します。
具体的には、退職金規定に基づく年度末の要支給額を計算し、前年度末からの増差額を当年度の負担として認識します。
退職給付引当金は、年度末における要支給額の全額を引き当てます。また、教職員の退職金の全部又は一部に充当するために私立学校退職金団体又は私立大学退職金財団に加入している場合には、退職金規定に基づいて計算される年度末要支給額から、同日にこの団体から受け取るべき交付金相当額を控除した額を基礎として、その学校法人の計上基準により算定します。
※学校法人が採用した算定方法は貸借対照表に脚注として記載します。

◆リース取引の会計処理
リース取引には、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引(ファイナンスリース取引以外のリース契約)の2種類があります。
リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生ずるコストを実質的に負担することとなる取引。
リース取引がファイナンスリース取引に該当するかどうかの判断基準及びその会計処理は、学校法人においても一般の事業会社と同様です。
なお、リース対象資産の総額に重要性が乏しい場合には、リース料総額をもって固定資産価額等とする利子込み法も認められています。
未経過リース料の期末残高÷(未経過リース料の期末残高+有形固定資産及びその他の固定資産の期末残高)<10%未満の場合
その他、再リースの場合は再リース料は賃借料等の経費として処理します。

◆基本金の取崩しとは
基本金の取崩しは単独では判断することができず、組入れとワンセットで考えることが必要であり、教育の質的水準の低下を招かないように十分に留意する必要があり、これに十分留意している限りにおいては学校法人会計基準に従い資産等を継続的に保持しない場合には取崩対象額として把握されることになります。
学校法人会計基準の第31号に該当する場合には、資産を他に転用するなどして継続的に保持する場合のほかは基本金取崩しの対象としなければならないこととされており、任意適用ではありません。

取崩しに関する学校法人会計基準第31条
①その諸活動の一部又は全部を廃止した場合=その廃止した諸活動に係る基本金への組入額
②その経営の合理化により第1号基本金対象固定資産を有する必要がなくなった場合=その固定資産の価額
③第2号基本金対象資産を将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなった場合=その金銭その他の資産の額
④その他やむを得ない事由がある場合=その事由に係る基本金への組入額

②の補足説明
実務上は以下が良くある例です。
・学生通学用のバスを売却したが、今後取得しない場合
・機器備品について、除却資産の取得価額より本年度に取得した資産の取得価額の合計額が少なく、今後当該除却資産と同額の金額水準まで機器備品を取得しない場合

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