会計ソフト選びについて

個人事業主でも法人でも確定申告はしなければなりませんが、そのために利用する会計ソフト選びについて考察です。
厳密には会計ソフトと税金申告用の税務ソフトは別なのですが、個人事業主の場合は会計ソフトにも付属している税務申告機能で足りることが多く、法人の場合は前回の記事会社設立後の経理・税金業務の年間スケジュールで解説したように税務申告は税理士に依頼するケースがほとんどであり、税理士以外に税務ソフト選びはあまり関係がないため今回は会計ソフト選びについてのみ記載します。
今回の記事は個人事業主を前提にしていますが小規模な法人でも参考になるかと思います。

◆会計ソフトの利用状況(個人事業主の場合、以下同様)
株式会社MM総研のアンケート結果によると、2019年から2021年までの直近3年間における会計ソフトの利用状況は全体の約35%のみで残りの約65%は会計ソフト利用無しとのことです。会計ソフトを利用しない場合の申告のための会計処理記録方法は、市販の出納帳やノートに手書きするのとエクセルなどの表計算ソフトに入力するのがそれぞれ4割程度とのことです。

要約すると会計データの各入力方法の大まかな割合は以下のとおりですが、そもそも会計ソフトを利用している個人事業主は全体の35%と決して多くないことが分かります。個人事業主は事業の内容がシンプルかつ規模も小さく確定申告も法人に比べて容易なため、税理士の立場からしても特に違和感の無い結果です。

◆会計ソフト各社のシェア
次に会計ソフトを利用している35%の内訳を見てみると、26%がインストール型ソフト、9%がクラウド会計ソフトでその内訳は5%=弥生会計(クラウド)、2%=freee、マネーフォワード=1%、その他=1%という結果でした。インストール型ソフト26%の内訳は不明ですが、おそらくクラウド会計ソフト同様に弥生会計が最大手で15~20%程度を占めており、次いで勘定奉行やMJSなどその他大手会計ソフトが占めているのではないかと推察されます。

freeeとマネーフォワードは良く広告を目にするのでもっとシェアが大きいかと思っていましたが2つ足しても全体の3%程度しかなく、逆に弥生会計はほとんど広告を目にする機会がないため特にクラウド会計ソフトの分野ではfreeeとマネーフォワードに押されていると思っていたのですが実際は2社合計以上のシェアを占めておりこの結果はかなり意外な印象です。
インストール型ソフトとはパッケージソフトやWeb上で提供されているソフトをデバイス上にダウンロードすることで利用できる形態のことで、クラウド会計ソフトとはインターネット上でサービスを利用する形態でPC以外にも携帯電話やタブレットなどさまざまな端末で利用する形態のことを指します。

◆会計ソフト各社の業績
弥生会計(非上場)、freee、マネーフォワードの3社の直近の業績は以下のとおりです。
3社とも基本的に会計ソフトビジネスメインの単一セグメントですが、弥生会計のみが安定して利益を計上しておりfreeeとマネーフォワードは苦戦している状況です。
弥生会計は全体のうち20~25%のシェアを占めているのに対し(インストール型15~20%、クラウド型で5%)、freeeとマネーフォワードは各1~2%程度しかないことから、シェアの差が売上高及び利益の差に直結していることが分かります。

弥生会計

freee

マネーフォワード

◆最後に
今回利用したシェアに関するデータは株式会社MM総研のアンケート結果であり実際のシェアと必ずしも一致するものではありませんが、回答事業者数は2万以上であるため概ね一致しているものと想定されます。

freeeとマネーフォワードは知名度が高く実際に私の知人でも利用者が複数名いることからシェアが1~2%しかないことは意外な結果でした。
2社の売上は年々拡大しているものの以下の点から今後劇的にシェアを拡大して業績改善するためのハードルは高く、将来的なビジネスモデル(サービス内容)変更や値上げの可能性は弥生会計よりも高い状況にあるという印象です。
・徐々に売上高が拡大しているものの2021年度も赤字見込みであり依然として厳しい状況にある。
・今までかなり広告宣伝費をかけてこの程度のシェアにとどまっている。
・会計ソフトの基本的な機能は各社でほぼ差が無く他社と差別化を図ることは難しい。
・メインターゲットの個人事業主は65%が会計ソフトを利用しておらず市場規模自体の拡大はあまり期待できない。

弥生会計は新興2社が台頭してきたここ数年でも業績が安定しており、また創業から40年以上経過しているという実績も十分です。
基本的に会計ソフトとしての機能は各社大差はなく、また料金面でも各社同程度のため、個人事業主の方で会計ソフト選びに迷った際には将来も含めてサービス内容(機能)・料金の安定度が高いと考えられる弥生会計を選ぶのが無難かなという印象です。

逆に新興2社は歴史が浅く良くも悪くも今後様々な変化が生じる可能性が高いため、これら2社を選択する際には事前に値上げや機能変更の可能性を確認してからにすると良いでしょう。

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