2021年 監査法人の異動(交代)状況

異動の件数
以前の記事で監査法人・公認会計士(以下監査法人等)を変更することは企業にとって実はそれほど大変ではないケースが多いという旨の内容に触れましたが、実際に2021年に入ってからの3ヶ月間に公表された上場企業における監査法人等の異動は30件を超えています。
上場企業は約3,700社なので現時点では1%にも満たないですが、日本企業は3月決算が圧倒的に多いので5月以降に一気に増加します。

以下は公認会計士・監査審査会が公表している資料の抜粋ですが、年々監査事務所の変更(=監査法人の異動)が増加していることが確認できます。
2021年では上場企業のうち150社以上、全体の4〜5%において監査法人が異動するのではないでしょうか。

新旧監査法人の状況
2021年の状況だけではありますが、大手から準大手以下への交代が7割程度と多く、特に小規模監査法人への交代が目立ちます。
次いで大手→大手への交代が2割程度と多く、逆に小規模監査法人→大手への抗体は1件もありませんでした。
通年では以下の通り大手から準大手以下への交代は4割程度に落ち着くようです。

異動理由
任期満了が圧倒的に多く9割程度を占めており、具体的な説明として監査の品質・体制・報酬を総合的に勘案した結果、と記載している企業が多いです。
9割という割合はおそらく年間を通して大きく変わらないでしょう。
任期満了とは、監査業務は1年契約のため期末の有価証券報告書を公表したタイミングで翌期の契約更新はせず、新しい監査法人へ交代するということを意味します。

所感
以下は推察も踏まえた個人的な所感ですが、以前の記事で書いた大手監査法人のメリット・デメリットについて、デメリットの方が大きいと判断し中小監査法人を選択する企業が増えているように感じます。

まず、異動理由についてですが、日本では監査法人は◯年で交代しなければならないというルールや慣習はなく、もし企業が現在の監査法人に満足していればそのまま契約更新するのが手間も時間もかからないのですが、あえて他監査法人への交代を検討するというのは現状に何かしらの不満がある可能性が高いです。

そして不満の理由は、いくつかの企業は直接言及していますが、大手監査法人の高額な報酬又は報酬と体制(対応)が見合っていないと感じる企業が多いためであり、その結果として大手監査法人から中小監査法人への交代が増えていると思われます。
公表されている異動理由はかなり定型化されており、また当たり障りない記載がされていますが、通常企業から監査法人の視点・品質・独立性の良し悪しといった項目は判断が難しいため、実際には分かりやすい監査報酬と日頃の対応(体制)に不満を持たれている可能性が高いと感じます。

このような理由で大手監査法人よりも中小監査法人を選択する企業が徐々に増えていることが、近年の監査法人の異動件数の増加に繋がっていると推察されます。
近年大手監査法人は監査報酬を値上げする傾向にあるため、大手監査法人から中小監査法人への交代という流れはしばらく継続するのではないでしょうか。

※監査法人側の理由で交代していることもあり得ますが、関係者しか知り得ない情報であるため当記事では触れていません。

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