監査法人・公認会計士を変更したい場合の手続きは?

前回までの記事では以下のように監査法人の良し悪しや監査報酬について解説してきましたが、今回の記事ではもし企業が何かしらの理由により監査法人や公認会計士(以下監査法人等)を変えたいと考えた場合の手続について解説します。
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◆スケジュール
大まかな流れは以下の通りです。
⓪監査法人等を交代することについて企業内部での意思決定
①新監査法人等へ交代の打診
②新監査法人等にて契約締結の可否について検討(予備調査)及び企業は予備調査対応
③取締役会や理事会等の内部で監査法人等交代の決議
④外部へ異動予定を公表
⑤株主総会での選任決議により正式に交代

◆対応が必要な事項
監査の種類により異なるのですが、大まかには以下の通りです。
・企業内部での事前の意思決定=新監査法人等の候補の検討や正式に交代の打診をすることに関して企業としての意思決定が必要です。小規模な組織であれば経理部と担当役員で合意すれば良い程度ですが、組織が大きくなるほど関係者が増え意思決定までの時間がかかります。個人的には企業にとってこの手続が一番時間がかかるという印象です。
・新監査法人等の予備調査の対応=会計データの提出や質疑応答などの対応が必要です。基本的には既存のデータを提出し現状を説明するのみなので、企業にとって特に大きな負担は無く、実質的な対応日数は数日〜1ヶ月程度です。 ※一般的に予備調査には費用が発生します。
・企業内部での意思決定=監査の種類により異なりますが、例えば会社法監査の場合には取締役会決議、監査役会の同意及び株主総会の決議が必要です。
・外部への通知=上場している場合は監査人異動(交代)の通知という開示手続が必要です。具体的な方法は各市場に問い合わせをして確認をすれば、開示文章もほぼ定型化されているので特に大変ではありません。
・その他=新旧監査法人への通知や守秘義務に関する書類の提出などありますが、いずれも形式的な作業で特に負担はありません。

◆交代のタイミング
監査業務は年間契約のため年度の変わり目で交代するのが理想的かつ一般的です。
3月決算の場合では、年内に新監査法人の検討など実質的な意思決定を済ませ、1月末までに予備調査を完了しておくと、その後の内部の意思決定から外部への公表までスムーズに行うことができます。
期中交代も最近ではそれほど珍しく無く、スケジュール自体も基本的には変わりませんが、新旧監査法人等への監査報酬の重複や臨時株主総会の開催など定期交代と比べて追加の費用や手続が発生する可能性がある点に留意が必要です。

◆最後に
監査法人等の交代は新監査法人等の負担が大きく、実は企業にとっての負担はそれほど大きくありません。
おそらく新監査法人等をどこにするかという企業内部での事前の意思決定に最も時間を要しますが、多くの企業にとっては実質的に経理部と担当役員の合意があればほぼ完了で、場合によっては担当役員や社長の一声で決定されるケースも珍しくはないでしょう。

正式に予備調査を行うことになると費用が発生しますが、その前の見積書(提案書)をもらうまでは無料であるケースが多いため、ひとまず監査法人等へ連絡をして話だけでも聞きに行き特に問題無さそうであればその後の手続に進むというケースが一般的ではないでしょうか。
見積書(提案書)をもらうだけなら特に負担やリスクは無いので、現状の監査法人等に何かしらの課題や不満があるのであれば、まずは話だけでも聞きに行くのが良いでしょう。

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