公認会計士の仕事はAIに奪われるのか?
数年前からニュース等で目にする『公認会計士の仕事はAIに奪われるのか?』について、公認会計士の仕事=監査という前提で考察します。
果たして公認会計士はいずれ消える職業なのでしょうか?
◆現役公認会計士としての予測
当面は大丈夫だが10年、20年先はどうなるか分からないと感じます。
現在のITツールはまだまだ未熟でとても公認会計士の業務を奪うレベルのものではありませんが、以下①コスト面(監査業務の内容)と②品質面(監査法人の問題)という2点の理由から、いずれ監査業務の大部分はAIに奪われると考えています。
①コスト面(監査業務の内容)
前回の記事で紹介したように監査業務の大部分は単純なもので決して人間にしかできないものではありません。
現在のITツール(AI)は正直使い勝手の悪いものが多く、かえって業務の効率性を害っているようなケースさえもあります。
ただ、ITは飛躍的に進歩するため使い勝手が良くなりさえすればあっという間に現在の業務の大半を代替可能でしょう。
現時点でも、例えば開示チェックと呼ばれる単純な前期開示資料との照合や計算チェックなどは未だに人間が行っていますが、スキャンして自動でチェックするような技術は即座に実現できるはずです。
AIは初期コストはかかりますがトータルコストは人件費よりはるかに安く、また当然ヒューマンエラーもありません。
技術的な問題がクリアされれば、コスト面で導入しない理由はないでしょう。
②品質面(監査法人の問題)
監査の目的は企業が作成した財務諸表が正しいかをチェックして監査意見を公表することなので、現在でも正しい監査意見が公表されているのであれば品質面では公認会計士でもAIでも問題ないこととなります。
しかし、現実には多くの失敗事例があり、記憶に新しいところでも東芝や富士ゼロックス、オリンパスなどの有名な大企業での粉飾決算事件が発生しています。長くなるため詳細は割愛しますが、これら事件は本来なら監査法人が期中に発見し修正指導するか、財務諸表は誤っているという監査意見を公表しなければいけなかったケースがほとんどです。
つまり、監査法人(=公認会計士)は不正や誤りを発見できず誤った監査意見を公表してしまっており、自身の責務を全うできていなかったのです。
また、公認会計士協会が各監査法人の監査品質をチェックする公認会計士協会レビューというものがあるのですが、そのレビュー結果を見ると単純に監査基準を遵守できていないという稚拙なものが散見されます。
AIなら不正や誤りを全て発見できるのかは未知ですが、AIの利用範囲を徐々に拡大していくことで現在よりも発見率を上昇させることは可能だと思われます。
少なくとも監査基準が遵守されないという状況は防げます。
◆最後に
以上より、公認会計士が作業を行っても不正・誤りを発見できていない現状から、今後技術的な問題が解決すれば徐々に(もしくは急に)公認会計士の仕事の大部分はAIに奪われることとなるでしょう。
ただし、AIに奪われるのは現在の単純な作業であって、今後の状況により新たな業務内容が増えることはあり得るため、AIに奪われた業務量の分だけ会計士も減少するということにはならないと思います。
また、企業が作成した財務諸表は誰かがチェックしないといけないので、監査という仕事自体は残り、その仕事を誰が行うかというとやはり公認会計士しかないため、公認会計士という職業自体も残る可能性は高いでしょう。
今後公認会計士の業務がいつ・どのように変わるのかは誰にも分かりませんが、公認会計士としては柔軟に変化に対応する力が今以上に重要となります。